納税で手放さざるをえない土地面積が増加 - 相続コラム | 冨永正見税理士事務所

納税で手放さざるをえない土地面積が増加

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相続によって取得した土地等を相続開始から3年10ヶ月以内に譲渡した場合には、 土地の譲渡の計算上、納付すべき相続税額のうち相続財産全体に占める土地等の評価額の割合に相当する金額を差し引く 事ができます。改正により、この金額が縮小され、土地を中心に相続される方への影響は非常に大きいといえます。

納税で手放さざるをえない土地面積が増加

2014年8月13日

相続した土地等を3年以内に譲渡すると特例で譲渡所得が安くなる

相続によって土地等を取得した場合に、その相続税の申告期限から3年以内に、 つまり相続が発生してから3年と10ヶ月以内にその相続によって 取得した土地等を譲渡したときは、 土地の譲渡所得の計算上、納付すべき相続税額のうち、 相続財産全体に締める土地等の評価損の割合に相当する金額差し引くことができます。

これは、土地等を相続したときに相続税が課税され、その土地を譲渡したときに譲渡所得・住民税が課税されるため、 二重課税による負担感があることに配慮したものです。この制度があまりに土地所有者に有利になりすぎているため 改正すべきだという意見が会計検査院から財務省に提出され、これを受けて平成26年度税制改正で平成27年1月1日移行の 相続開始による土地等の取得分から控除額を減額されることになりました。

算式
図1 算式

申告期限から3年以内に譲渡した場合、譲渡した人が納付すべき相続税額のうち、 債務を控除する前のその人の相続税の課税価格に占める 「相続によって取得した土地等の相続税の課税価格に対応する」相続税額を 土地の取得費に加算することとされています。 平成27年1月1日以後の相続によって取得した土地等の譲渡から、譲渡した人が納付すべき相続税額のうち、 債務を控除する前のその人の相続税の課税価格に占める「譲渡した土地等に対等する」相続税額に加算額が縮減されます。

改正前後で税額はどれくらい違うのか?

図2の計算例は、10億円の財産を相続した人が、 3億円の相続税を納付し、 相続税評価額2.5億円のB土地を3億円で譲渡したと仮定して計算したものです。

納付した相続税額3億円のうち譲渡所得税の計算上控除される金額は、 改正前の場合2億4,000万円ですが、改正後は7,500万円に減額されることになります。

事例
図2 事例

その結果、課税譲渡所得金額が改正前は3,600万円ですが、改正後は2億100万円になります。 譲渡所得税・住民税の税率の合計は20%ですので、 税額の合計額は、改正前は720万円ですが、改正後は4,020万円に増加する事になります。

なお、計算式のうち1,500万円については、先祖伝来の土地であるため、実際の購入価額がわからない場合に、 譲渡価額の5%を概算取得費とできる制度を利用しています。また、譲渡費用は不動産仲介業者への仲介手数料等の諸経費の合計です。

相続税の農地の納税の猶予[1]の適用を受けている場合でも、 控除対象となる相続税額は、納税猶予適用前の相続税額を対象として計算されます。 この事例の場合ですと、3億円から1.5億円を差し引いた実際に納税すべき税額ではなく、 納税猶予額を含めた3億円を対象として控除税額を計算します。 このことについては改正後も適用されます。このように農地の納税猶予制度適用者にとっては非常にありがたい制度といえます。

平成26年中の相続開始まで活用できる

改正は、平成27年1月1日以後の相続開始分からです。平成26年12月31日までの相続開始分については、 譲渡時期が平成27年1月1日以後にあっても、相続税の申告期限から3年以内の譲渡であれば、 現行の特例が適用されます。 上記事例の算式でいえば、2億4,000万円の譲渡所得までは譲渡所得税が課されません。

たとえば、ロードサイドの店舗用地を相続によって取得した相続人が、店舗を保有している同族法人に2億4,000万円までの譲渡所得金額 に相当する土地を時価で売却した場合、 結果として譲渡所得税がかからずに相続人の土地を会社に移すことが出来ます。

そして、相続人のもとにはいってきたお金は、相続税の納税資金に充てることが出来ます。 納税資金がない場合、相続税額を繰り延べする延納という方法でありますが、 延納の利子税は必要経費にはなりません。

しかし、会社が金融機関から融資を受けて土地を購入するとその利息は会社の損金となります。 但し、会社に借入金の返済能力がなければ絵に描いた餅です。 賃貸店舗の収入があるからできる方法なのです。 被相続人が生前からしっかりとした準備を行うことが、上手な相続を実現する秘訣なのです